羽田新ルートどう見る

国土交通省は2020年東京五輪に向けた羽田空港の「機能強化」として、来年3月29日以降、都心部を低空飛行する新コースの運用を開始すると決めました。都心低空飛行計画の問題点について、航空評論家で航空機の安全対策立案にも携わった杉江弘さん(元日本航空=JAL=機長)へのインタビュー記事を読んだので、ポイントを紹介します。

世界の大空港は環境と安全を守るため、郊外に建設するのが主流です。

羽田空港の都心低空飛行計画は、世界のすう勢に反しています。

羽田はかつて、大田区、品川区上空を飛んで騒音が激しくなったことから、上空を飛ばない約束を両区と結んでいました。今回の計画は、この約束にも反するものです。

世界の大空港で都心上空を飛行しなくなったのは、不測の墜落事故や落下物事故が起きれば、人や建物が深刻な被害を受ける危険性が高いからです。

今の航空機は複雑なシステムを持つハイテク機です。現在運航停止になっているボーイング737MAXの事故に見られるように、コンピューターの暴走や少しの操作間違いから制御不能になり、大事故につながる危険があります。

1994年には名古屋空港で中華航空機の墜落事故が起きましたが、名古屋市内に墜落しても不思議ではなかった。都心の上空で墜落事故が起き得ないと考えるのは、非常に甘い考えです。

機体が経年劣化すれば、パネルや部品が落ちやすくなります。日常の整備では落下物を完全に防ぐことは困難だと。また、長距離の国際線は気温が氷点下になる高度を飛ぶので、氷塊は大きな物で直径10センチ前後にもなります。上空約1000メートルで着陸体勢に入り、車輪を出す時に氷塊が落下するのです。直径10センチ程度の物でも、上空から落ちれば大変な被害を引き起こすことになります。

「騒音は最大でも80デシベル」という国交省の説明は、机上の空論です。

国交省は最近、「騒音を少しでも軽減する」として、飛行機の着陸時の降下角を現行の3度から3.5度に引き上げると打ち出しました。

世界の大空港では、降下角は3度です。パイロットにとっては、降下角が0.1度変わるだけで外の景色、高さが全く違って見えます。かつて「世界一着陸が難しい」と言われた香港啓徳空港(現在は閉鎖)でも、降下角は3.1度でした。

降下角3.5度は世界のほぼすべてのパイロットが経験したことのない急角度になる大問題です。

環境や安全運航が脅かされるこのような計画は、やめるべきでしょう。もし、事故が起きたら、政府は「想定外です」と言うのか?それを裁判所は認めるのか?福島第一原発事故のように?