自民党改憲草案にみる【公務員の労働基本権制限】

現行憲法尊重擁護義務がある(現行憲法第99条による)安倍総理大臣による改憲発言が目立つようになってきており、国会でも強引に審議が動き出しています。こんな中、自民党改憲草案の学習会に参加したので、一端を紹介します。

自民党は、平成24年4月27日に日本国憲法改正草案を決定しています。あえて大きな特徴を3つ言えば、「国民の義務規定を多数新設していること」、「平和主義から戦争を行う国へ」、「公務員の労働基本権制限」があります。

公務員の組合ということで関心が高いと思われる「公務員の労働基本権制限」について、以下に紹介します。

【現行憲法】
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

【自民党改憲草案】
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交その他の団体行動をする権利は、保障する。
(以下新設)→②公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項の規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するために、必要な措置が講じられなければならない。

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日本国憲法改正草案Q&A(自民党憲法改正推進本部)による解説

【Q】公務員の労働基本権の制約について規定を置いたのは、なぜですか?

【A】憲法改正草案では、28条2項に公務員に関する労働基本権の制限の規定を新設し、「公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。」と規定しました。現行憲法下でも、人事院勧告などの代償措置を条件にして、公務員の労働基本権は制限されていることから、そのことについて明文の規定を置いたものです。

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【問題点1】「全体の奉仕者」論 終戦直後の考え方に逆戻り

【公務員の争議権に関する最高裁判例の変遷】

<第1期>
「全体の奉仕者」論を根拠に、労働基本権の制約を簡単に正当化 政令201号事件(1953年)

<第2期>
公務員法の労働基本権の制限規定を限定的に解釈(合憲限定解釈) 全逓東京中郵事件(1966年)

<第3期>
合憲限定解釈を放棄し、再び広範に労働基本権の制約を認めるようになる。ただし、「公務員の地位の特殊性と職務の公共性」が制約根拠とされ、「全体の奉仕者」論は用いられていない。 全農林警職法事件(1973年)

<自民党改憲草案>
再び「全体の奉仕者」論を制約根拠に。終戦直後の発想。

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【問題点2】制限の具体的範囲は法律に委任

草案28条2項では、「法律に定めるところにより」、労働基本権の「全部又は一部を制限することができる」と規定し、具体的な制限の範囲を法律に委任。法律で定めれば、団結権、団体交渉権、争議権のすべてを制限することができると読むことも可能。

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【問題点3】人事院勧告の機能不全のおそれ

2012年度~2013年度、国家公務員給与を平均7.8%引き下げる特例措置。これは、人事院勧告によらない給与の大幅削減でした。地方公務員の給与も減少傾向。人事院勧告などの代償措置を憲法で明文化しても、機能しないおそれ。

人事院勧告が本来の機能を果たさず、実質上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、争議行為を制限することが憲法上許されないと判断した最高裁判例(2000年)があるが、この判断が維持されるか否かも不明。

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【問題点4】ILO勧告や国際的潮流に逆行

ILO(国際労働機関)は、日本に対し、公務員に対し争議権を含む労働基本権の付与を認めるよう通算10回勧告している。しかし、それを日本政府は無視し続けている。英・仏は公務員に労働三権のすべてを認めている。アメリカも公務員労働者に団結権と団体交渉権を認めている。公務員に労働基本権を広く認める国際的潮流に逆行するもの。

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【問題点5】公務員だけの問題ではない

公務員内に組合が結成され、十分な活動が出来ることが、公務員の労働条件等との関係で非常に重要であるのはもちろんだが、それだけでなく、実際上、組合は例えば憲法99条(憲法尊重擁護義務)に即した活動、すなわち「国や自治体等が憲法を無視した動き」、「国民・市民の権利を制限する動き」をすることを組織の「中から」防止する努力をしてきた。

「上」の言うことに個人で逆らうことなどできないのだから、本草案により公務員の労働基本権が制限され、組合が弱体化されれば、市民の権利を制限する動きに抗う存在が失われてしまう。

現在ですら、自治体等による権利制限の動きとして、公民館による9条俳句掲載拒否問題(裁判)、東京都日野市が古い封筒を利用する際表に印刷された「日本国憲法の理念を守ろう」という言葉を黒く塗りつぶしていた問題(2015年10月)、戦争反対やTPP反対や原発反対の展示等に市の施設を貸さないなど、問題は数え切れないほどある。

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